
山奥のロマンチックな愛の結末と、相続の容赦ない現実

こんにちは! 行政書士法人TMsupportの上床(うわとこ)です。
今日は、少しロマンチックなお話から始めさせてください。
ある男女が出会い、一生を共にすることを誓いました。
「結婚のしきたりや、親戚付き合いなんて堅苦しい風習は、全部取っ払おう」 「お互いの感性を尊重し、何にも縛られず、2人だけの世界で愛を育みたい」
そして、何より運命的だったのが、2人の苗字がまったく同じ「佐伯」だったこと。
誰からも、そして法律からさえも縛られず、ふたりだけの時間を過ごすこと。それこそが自分たちの運命だったと確信する。そんなロマンチックな情愛に包まれて、2人の「事実婚」がスタートしました。
ふたりが選んだ愛の巣は、都会ではなく田舎。 市街地から離れ、緑深い林道を走った先にある、自然に溢れた山奥の一軒家です。
それはそれは、幸せな人生を過ごしていました……。
……と。
すみません!! 凄く素敵なお話をしようとしましたが、うちの事務所、小説なんて書けません(笑)。 宮崎県の未来を守る、ガチガチの「相続専門事務所」でした!
というわけで、ここからは現実の相続のお話をしたいと思います。
時は何十年も流れ、TMサポートに相談がありました。
「内縁の夫が亡くなりました。主人が遺してくれた預金や、2人で暮らした土地・家の相続手続きをしたいのですが……」
まさに、冒頭でお話しした、あの幸せな事実婚のご夫婦の「その後」です。
ご存知の方も多いかと思いますが、改めて声を大にして言わせてください。
事実婚には、互いに相続権は、全くもって、ありません!!!
どんなに愛し合っていても、どれだけ長く連れ添っても、法律上は冷酷なほどに「他人」扱いされてしまうのが、日本の相続の現実なんです。
では、何か対策はされていたのでしょうか? 慌てる相談者様と、私(上床)のやり取りがこちらです。
- 上床:「亡くなったご主人に、他に法律上の相続人はいますか?」
- 相談者:「はい、確かご兄弟がいると聞いています……」
- 上床:「その相続人(ご兄弟)とお話しはできそうですか?」
- 相談者:「分かりません……ずっと連絡も取っていないので……」
- 上床:「ご主人からの遺言書はありますか?」
- 相談者:「ノー……」
- 上床:「では、生前に財産を移す生前贈与はされていましたか?」
- 相談者:「ノー!」
- 上床:「では、生命保険の受け取り人指定などは?」
- 相談者:「ノー!ノー!!」
- 上床:「養子縁組を…」
- 相談者:「ノー!ノー!!ノォォォォ!!!」
「夫婦の中の夫婦」でも、法律の壁は崩せない
事実婚は、「夫婦の中の夫婦」であることも珍しくありません。でも、本当に相続権が無いんです。だからこそ、事前の対策が必要になるんです。
今回のケース、亡くなった直後の手続き(死亡届の提出、葬儀、火葬、埋葬、年金の手続きなど)は、「内縁の妻」という立場でなんとか順調に進めることができました。
しかし!! その後に、もの凄く高い、高すぎる壁が立ちはだかりました。
それが、「銀行預金の解約」と「不動産の名義変更」です。
結婚という法律や、親族とのお付き合いである「日本のしきたり」をすべてシャットアウトして、山奥にふたりだけの美しい世界を作った結果……
いざ手続きをしようとした時、「お付き合いのなかった相続人(義理のご兄弟)とのコミュニケーション」という、非常に難しい問題が待っていたのです。
なぜなら、これらを解決するためには、相続人全員の協力が必須だからです。
法律は、どれだけ美しいロマンがあっても酌量の余地はありません。 残された奥様は、大切な人を失った悲しみの中、気が遠くなるような険しい道を、解決に向けて一歩踏み出すことになりました……。
上床からのメッセージ
もし、この記事を読んでいる方の中に、「私たちは事実婚だから大丈夫」「お互い同じ苗字だから」と思っている方がいたら、今すぐ対策を考えることを勧めます。
大切な人を本当の意味で守るために、一歩先の手続き、そして、山奥の美しい思い出を、悲劇の思い出に変えないために。
行政書士法人TMsupport 宮崎県全域、相続・遺言のご相談はお気軽にどうぞ。
